アロマな君に恋をして
「私、は……」
こんな風に言い寄られても、今までは麦くんに守られている実感があったから、毅然とした態度をとることができた。
でもただ一人になってしまった今の私は、オーナーの目を真っ直ぐ見返すことすらできない。
思わずはあ、と熱いため息がこぼれた。
考えすぎて熱が上がってきたのかもしれない。
「……まあ今は、体を治すことが先決、だな」
ふっと私の手を包んでいたオーナーの手が離れ、彼は食器棚からグラスを取り出すとそこに水を注いで私の前に置いた。
「薬の場所は?」
「あ、ええと……自分でやります」
椅子から立ち上がると、くらりと眩暈がして体がよろけた。
咄嗟にテーブルのへりにつかまった私の元へ、オーナーが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「無理するなよ。で、薬は?」
「……電子レンジの上、です」
オーナーは私の答えを聞くと、薬を取りに行く前に私を椅子に座り直させておでこに手を当ててきた。
「……かなり高そうだな。やっぱりあっちで食べさせた方が良かったか。気が利かなくてすまない」
「そんな、大丈夫ですよ……せっかくなので、もう少しいただきます」
正直、かなり無理をしていると言う自覚はあった。
でもいつにないオーナーの優しさが風邪で弱った心に沁みわたり、彼の一生懸命作ってくれた不格好なにゅうめんを、私はできる限り胃に流し込んだのだった。