アロマな君に恋をして
薬を飲んで寝室に戻ると、オーナーはドレッサーの椅子をベッドの横に持ってきてそこに腰かけ、何故だか落ち着いてしまっているので私は布団の中から声を掛ける。
「もう、帰っていいですよ?」
「きみが眠ったら、キッチンを片づけてそれから帰るよ」
「……寝にくい、です」
そう言って彼を睨んでみても、微笑を浮かべるばかりでどいてくれる気はなさそうだった。
仕方がないから寝返りを打ってオーナーに背を向け無理矢理に目を閉じると、薬のせいか意外に早く眠気が襲ってきて、私はいつの間にか意識を失っていた。
――目が覚めたとき、部屋は真っ暗で、体を起こすと隣にいたはずのオーナーの姿もなくなっていた。
今何時だろう……私、かなりぐっすり寝てたみたい。
喉の渇きを感じて立ち上がり、部屋の扉に手を掛けたところで気が付いた。
……玄関の方から、話し声がする。
オーナーと、もう一人……あの声はまさか。
私は寝起きの格好であることも忘れ、部屋を飛び出した。
「なずなさんに会わせてください!」
「……だから、今寝ているから出直してくれと言ってるだろ」
「それならどうしてあなたは帰らないんですか!」
玄関のポーチでオーナーに噛みつくように声を荒げているのは、やっぱり彼だった。
「麦くん……」
ぽつりと彼の名を呟くと、二人の視線が一気にこちらに向いた。
「なずなさん……!」
「平気なのか、寝てなくて」