アロマな君に恋をして

「放って、おいて……くだ、さい」


涙声で私は答える。

そんなことは自分が一番よくわかってるんだから……


「放っておくわけがないだろ」


オーナーは私の側に来てしゃがみ、そのままふわりと私を抱き締めた。

スパイシーな香りのするシャツに、溢れる涙が染み込んでいく。


「なんで……今日に限って、そんなに優しくするんですか……」


この人に甘えてしまいたい、という弱い自分が顔を出しそうになる。

だから、こんなこともうやめてほしいのに……


「……優しくしているわけじゃない。つけこんでるだけだ。弱ったきみの心に」

「……ずる、い」

「ずるくたっていい。きみを手に入れるためなら、どんな隙も逃さない。言ったろ? もう遠慮しないって……」


背中に回された腕に力がこもる。

つけこんでるだなんて、正直に言ってしまうのがオーナーらしいと思った。

……この人の前でなら、私もずるい女になっていいのかな。

私はだらりと降ろしたままだった自分の両手を、おずおずと彼の背中に回した。


それに気づいたオーナーが私の顔を覗き込み、恥ずかしくなってそっぽを向こうとしたら……


「――ん」


私の唇は彼のそれによって塞がれ、身動きがとれなくなってしまった。


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