アロマな君に恋をして
一度で終わると思ったのに、ゆっくり唇を離したオーナーは私を愛しそうに見つめると、再び唇を重ねてきた。
「ん、ぁ」
優しく啄まれたと思ったら舌が滑り込んできて、思わず後ずさると背中が壁にぶつかった。
これじゃ逃げられない。
でも、それもいいのかな……
このままつけこまれてしまえば、私は楽になれる……?
座った体勢のまま壁に押し付けられた私は、いつの間にか自分からも、キスを求めていた。
寒いはずの廊下を暑く感じるのは、熱のあるせい?
それともオーナーに、熱くさせられているの……?
繰り返されるキスの合間にそんなことを考え時折ぼうっとする私に、オーナーは吐息混じりの声でこんなことを言った。
「……ごめん。病人だったな」
私が小さく首を横に振ると、オーナーは乱れた前髪をかき上げ、ここへ来たときのように私を軽々抱き上げた。
「とりあえず休んだ方がいい。何か温かい飲み物でも入れるから」
私はただ頷き、オーナーの首に腕を巻き付けた。
……こんな自分は本当に嫌な女だと思う。失恋したばかりで、他の男の人に走るなんて。
だけど……
「……あの彼氏を忘れるために僕を利用するんだとしても、別に構わないよ。きっかけなんてなんだっていい。ただきみが手に入ればそれで」
相手がこの人ならばそれも許される気がする。
この人なら私のずるさまですべて、受け入れてくれる気がする。
そんな都合のいい解釈をした私は、彼の腕の中でそっと目を閉じた。