アロマな君に恋をして
「シナモンティーだ。身体があたたまる」
「……ありがとうございます」
私はベッドから身を起こして、その縁に腰かけた。
オーナーの手から受け取ったマグカップからは、シナモン独特の香りが漂っている。
コクリと一口飲むと、それだけで喉からポカポカ温まってくる気がした。
「オーナー」
「ん? 口に合わなかった?」
「違います、あの……」
このまま本当にオーナーと深い関係になるのなら、麦くんを思い出さなくて済む場所で、一からやり直したい。
私はオーナーを真っ直ぐに見つめて、口を開いた。
「私……イギリスに行きたいです」
少し離れた場所で立っていたオーナーは、ゆっくり近づいてきて私の隣に腰を下ろす。
「無理して今日結論を出さなくてもいいよ。これからもしつこくきみにつきまとうつもりだし……」
「行きます。行きたいんです!」
正確には“逃げたい”なのかもしれない。
でも、麦くんを忘れて前向きに生きていくためには、離れるしかないと思うから……
「……わかった」
オーナーは私の頭を引き寄せ、自分の胸に抱いた。