アロマな君に恋をして
電車を降りてなずなさんの家に向かう途中、冬至が過ぎたばかりの街はすぐに暗くなってきてしまい、それと同時に弱気な自分がどんどん俺の中に存在を広げていった。
また、追い返されたら。
顔さえ見せてくれなかったら。
そんな考えばかりが頭をよぎり、その度に頭を振って自分を奮い立たせた。
そして、とうとう彼女のアパートの前まで到着し、乱れる呼吸を整えながら目的の部屋に視線を向けた俺は……
見てしまったんだ。
この世で一番見たくないものを。
八十を超えたばあちゃんの言うことなんて、真に受けるんじゃなかった。
瞳に映ったのは、部屋の前で濃厚なキスを交わすなずなさんと徳永さん……
俺の頭の中は真っ白になった。
足が棒のように固まり立ち去ることすらできない。
「……せっかくのクリスマスなのに、ランチと映画だけですまなかった」
おまけに聞きたくもない会話までも聞こえて、でも耳は勝手にそちらに集中するから、俺は固まった足をなんとか動かしふらふらと真下の部屋の前に身を隠した。