アロマな君に恋をして
「いいんです……セリちゃん、寂しがりますから」
「三人でディナーでも、と言ってはみたんだけど、まだ照れてるみたいなんだ。でも、初詣は一緒に行きたいと言ってたから、その時に三人でゆっくりしよう」
「はい」
それからしばらく間があった。きっと二人はまたキスをしたんだろう。
もう、なずなさんは新しい恋に生きてる……あの日言われた通りじゃないか。
不意に手に持っている紙袋を忌々しく感じた。
きっと、徳永さんはなずなさんにとびきり素敵なプレゼントを贈ったに違いない。
ばかみたいだ、俺。
手作りの芋ようかんなんてださいもの持って。
「――おやすみ」
「おやすみなさい」
その会話を最後に、徳永さんはアパートの階段を降りていき、大通りへ向かう方の道に消えていった。
そしてほどなく、なずなさんの部屋の扉が閉まる音がした。
……今訪ねて行けば、会える確率は高い。
だけど俺にそんなことをする勇気はもうなかった。
「――なずなさん、お幸せに」
最後に彼女の部屋の方を振り返り、俺はかすれた声で言った。
鼻をすすり、夜空を仰ぐと冬の星座が一気に滲んで、自分が泣いているのだと知った。
完全に、失恋してしまった――……
一瞬だけ希望を抱いたせいか、なずなさんと言い合ったあの夜よりも胸の痛みは強く、そしてどこまでも深く沈み込んでいくのだった。