アロマな君に恋をして
私の職場は、都内の小さなアロマショップ
“juin(ジュアン)”
ナチュラルをコンセプトとしたこのお店は、壁も床も家具も木製が主で、そこかしこに観葉植物も置いてある。
「なずなちゃん!昨日届いたオイルは?」
「あ、勝手に角の棚に陳列しちゃいました」
「おぉー、いいね。素敵じゃない」
私は大学を卒業後、このお店で販売員として働き始めた。
従業員はたったの二人で、私の他にもう一人。
「緒方さん、今日は何の香りにしましょうか」
「朝はやっぱり元気を出さないとね!今日はユーカリにしてみよっか」
大きな段ボールを抱えて開店前の品出しに精を出すのは、緒方明美(おがたあけみ)さん。
私より10歳も年上なのに、いつでもパワフルな頼もしい先輩だ。
店の中心に位置するテーブルに乗ったアロマディフューザーに、ぽたりぽたりと精油を落とす。
スイッチを入れれば、たちまち爽やかな香りが小さな店内に立ち込める。
外に出て入り口の扉にかかった“CLOSED”の札をひっくり返せば準備完了。
「いらっしゃいませ!」
今日も大好きなアロマと共に、私の一日が始まる。