アロマな君に恋をして

「……そんな風には見えなかった」

「え?」

「今日初めてなずなさんと会ったの。キレイだし優しいしパパはすっごく嬉しそうだったからあの人のことが本当に好きなんだと思う。でも……」


ああ、芹香ちゃんが着物姿なのは、今日が三人で行く初詣の日だったからなんだ。

そしてなずなさんと初めて顔を合わせた。……なのに芹香ちゃんは全然嬉しそうじゃない。


「なずなさん、ずっと無理して笑ってた。セリにはわかるの。だって、前のママがパパと別れる直前も、そんな笑顔ばかりだったから……」


芹香ちゃんはそう言って、薄く口紅の引いてある唇を噛んだ。

泣いてしまうのではないかと心配になって、俺は彼女の頭にそっと手を置いた。


「初めて芹香ちゃんに会ったから、緊張してただけじゃないのかな……?」


なずなさんが無理に笑っていたなんて、自分自身が信じたくなくて、芹香ちゃんにそう言ってみる。

でも彼女はかぶりを振るだけだった。


「違う。だって、パパに対してもだもん。そんな状態で“彼女と結婚しようと思う”なんて言われても、なんか違うんじゃないかって思えて……」

「……結、婚」


俺は思わず口に出してしまった。

徳永さんがそういうつもりであることはわかっていたはずだけど、改めて芹香ちゃんの口から聞かされると現実味が何倍にも増した。

同時に、なずなさんを失った喪失感も……


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