アロマな君に恋をして

「麦くんはどうなの?」


芹香ちゃんはまるで友達のように、俺を“麦くん”と呼んだ。いつの間にか敬語も消えている。


「どうなの、って……?」

「もう好きじゃないの? なずなさんのこと」


俺を見つめる幼い瞳はどこまでも澄んでいて、思わず目を逸らしてしまう。

好きじゃない……とうまく嘘が言えたらいいのだろうけど、それはできそうになかった。


「好き……だと、思うよ。今でも」


芹香ちゃんの頭から手を離して、ぼそぼそと俺は呟く。


「だったら……!」

「でも、どうしようもないんだ! 俺たちはもう修復不可能なんだよ!」


いきなり声を荒げた俺に、芹香ちゃんは驚いてびくりと肩を震わせた。

もう、なずなさんは俺を受け入れてくれないんだ。

どんなに俺が側に居ることを望んだって……


「ごめん……大きな声出して」

「――意気地なし!!」


謝る俺の声にかぶせるように、芹香ちゃんが叫んだ。

今度は俺が驚き、大きく目を見開く。


< 201 / 253 >

この作品をシェア

pagetop