アロマな君に恋をして
「麦くんはどうなの?」
芹香ちゃんはまるで友達のように、俺を“麦くん”と呼んだ。いつの間にか敬語も消えている。
「どうなの、って……?」
「もう好きじゃないの? なずなさんのこと」
俺を見つめる幼い瞳はどこまでも澄んでいて、思わず目を逸らしてしまう。
好きじゃない……とうまく嘘が言えたらいいのだろうけど、それはできそうになかった。
「好き……だと、思うよ。今でも」
芹香ちゃんの頭から手を離して、ぼそぼそと俺は呟く。
「だったら……!」
「でも、どうしようもないんだ! 俺たちはもう修復不可能なんだよ!」
いきなり声を荒げた俺に、芹香ちゃんは驚いてびくりと肩を震わせた。
もう、なずなさんは俺を受け入れてくれないんだ。
どんなに俺が側に居ることを望んだって……
「ごめん……大きな声出して」
「――意気地なし!!」
謝る俺の声にかぶせるように、芹香ちゃんが叫んだ。
今度は俺が驚き、大きく目を見開く。