アロマな君に恋をして
「当たり前です。早くデザイン画起こさなきゃ……」
「ちょっと待て、俺の話を聞け」
頭の中はもうどんなリングピローにしようかということに占領されつつあったのに、店長はそんな俺を引き留める。
「……これ、変だと思わないのか? “完成したら式当日、彼自身に会場まで持ってきてほしい”だなんて」
「俺が結婚式場まで持って行くってことですか……確かに変ですね。会場と日にちをちゃんと教えてもらえれば、その日までに式場に届けておくのに。
……店長、依頼主ってどんな人なんですか?」
「それは……」
何故か俺から目を逸らし、押し黙ってしまった店長。
それから何かと葛藤するような表情をし、ようやく口を開いた。
「誰とは言えない。……いや、言わないってのが男の約束だからな。でも、これだけは言っておく。依頼を受ける受けないもお前の自由だ」
「意味が良くわかりませんけど……とにかく俺は受けるつもりです」
「そうか……それなら俺は全面的にお前を応援する。店が忙しいとき以外は裏に引っ込んでその作業やってていいぞ」
「ありがとうございます」
なんとなくスッキリしない会話だったけど、依頼主が誰であれ結婚式を華やかに彩るリングピローを作りたい。
既に四~五パターン浮かんでいる案を早く絵にしたくて、俺はスタッフルームに入るとすぐ白い紙と鉛筆を手に長机に向かった。