アロマな君に恋をして

起こした何枚ものデザイン画をその日のうちに店長に見せ、依頼主のイメージするものの希望はどんなものかと聞いてみた。

でも、俺の作ったものならなんでもいいということで特にあちら側からの注文はないらしかった。

それはそれで余計に困るけど、時間もないし……と店長の意見も聞きつつ、レースをあしらったピローの上でテディベアが向かい合い、彼らの腕に指輪を通すタイプのものを作ることに決めた。


俺ってクマが好きだよな……と、結局未完成のまま家の収納の奥深くにしまいこんだクリスマスプレゼントのことを思い出し、少しだけ落ち込みそうになったけど、あれはあれ、これはこれだ。

引き受けた仕事はきちんとやらなきゃ。


仕事終わりに手芸店で必要な道具を買い込み、俺はその日からしばらく、リングピロー作りに没頭する毎日を過ごした。



「……手縫いとは思えねぇほど丁寧な仕事だな」


ほぼ完成した土台のピローを店番中の店長に見せるとそんなお墨付きをもらった。

俺はその評価に満足するとすぐにまた裏に戻り、パールやスワロフスキーを丁寧にあしらっていく。


これから一緒になる二人の幸せを、その一粒一粒に祈りながら……



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