アロマな君に恋をして

リングピローの完成が近づいていたある日、店長からそのカップルの結婚式の具体的な情報を教えられた。


日付は二月十五日、バレンタインデーの翌日。

そして式場となる教会の場所、と言って渡された地図のコピーを見て、俺は一瞬間抜けな顔をしたと思う。


「……なんで英語なんですか、この地図」


なんとかstreet、くらいしか読めなくて首をひねる俺に、店長はしれっと言い放つ。


「海外挙式だからに決まってるだろ」

「え。……そんなの初耳……っていうか、俺当日行くんですよね!? リングピロー届けるためだけに海外行くんですか!?」


この店に来て依頼されたのだから、式場の場所は都内か……少なくとも関東圏内だと思っていたのに。


「そのためだけになるかはどうかは……お前次第だ」

「なんですかそれ?」

「この地図、どこの国のもんだかわかるか?」

「……いえ、全然」


俺は海外旅行をしたことがないし、だいいち英語圏の国なんてたくさんある。

地図を見ただけでわかるはずが……




「――イギリスだよ。ロンドンの教会で、ごくごく内輪の者だけで式を挙げるらしい。……お前、心当たりあるだろ」




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