アロマな君に恋をして
3.レモンバジルチキン
翌日、スタッフルームに緒方さんのお説教が響いていた。
昨日、電話でもさんざん私を怒ったのに、まだ言い足りないらしい。
私は仁王立ちする彼女の前で縮こまって椅子に座り、彼女の怒りがおさまるのを静かに待っていた。
「――どうして一緒にご飯食べて来なかったの!家に誘われたのを警戒するのはわかるけど、外でのランチなら一緒にすればよかったじゃない!!」
「だ、だって……ほぼ初対面の人と食事なんて、何を話したらいいか……」
「そんなのいざ面と向かってみれば意外と大丈夫なものなの!……あーもう、どうしてみすみす出会いのチャンスを逃すかなーなずなちゃんは」
「……別に誰とも出会いたくないですもん」
きっぱり言い切った私を見て、緒方さんが大きなため息をつく。
そして何故か寂しげな表情になると、声のトーンを下げて私に訊いてきた。
「……前の彼とのこと、まだ引きずってるの?」
平気な振りをしていたかったのに、膝の上に置いた手がぴくりと震えてしまった。
緒方さんはそれを見逃さず、私の隣の椅子に腰掛けゆっくり口を開く。