アロマな君に恋をして
15.ジャスミンの力を借りても

初詣の帰り、初めてオーナーの自宅マンションにお邪魔した。

帰りがけに『友達の所に行く』と言って姿を消したセリちゃんがいなかったから、彼と二人きりということでとても緊張していた。


エントランスを抜けてエレベーターに乗り、六階で降りる彼の背中について行くと“徳永”の表札があった。


「どうぞ」

「お、お邪魔します……」


予想通り、綺麗な玄関。廊下のフローリングもぴかぴかだ。


「一応年末にセリと大掃除したから、汚くはないと思うんだけど」


そう言う彼に通されたリビングダイニングも、よく片付いていた。


大きなテレビにソファ。
背の高い本棚には、上段にオーナーが読むのであろう難しそうな経営関連の本、下段の方にはセリちゃん用の児童文学なんかが入っていて、彼ら親子の生活が少し想像できて微笑ましい。


「コーヒーでいい?」

「……あ、私やります!」

「いいよ、座ってて」


そう言われても、何かしてないと変に緊張してしまう。

私はオーナーの居るキッチンに近づいて「お手伝いすることは?」と声を掛ける。


「じゃあ……」


そう言って振り向いた彼に腰を抱き寄せられ、驚いている間にキスされてしまった。


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