アロマな君に恋をして
長いキスの後、名残惜しそうに唇を離したオーナーが言う。
「……セリ、いつ帰ってくるんだろうな」
その何かを堪えるような声から、セリちゃんが帰って来なければどうなるのか、勘の鈍い私にでもわかった。
「きっと、お友達だってお正月は家族で過ごすでしょうし……すぐに帰ってくるんじゃないですか?」
だから、今はとりあえず離れましょう。そういう意味で言ったのだけれど……
「……ダメだな。この家にきみがいるのが新鮮で、どうにも理性が……」
オーナーは離れるどころかますます腕に力こめ、私を広い胸の中に閉じ込めてしまう。
――私はこの人に必要とされている。
その安心感と裏腹に、どこかボタンを掛け違えたような違和感が胸の内にうっすらと広がる。
それを振り払うようにしてオーナーを見つめれば、彼は再び私の唇を奪い、悪い方向へと向かいそうな私の思考を遮断してくれるのだった。