アロマな君に恋をして
連れていかれたのは、有名ホテルの最上階にあるイタリアンだった。
オーナーは予約をしていたようで、案内されたのは一番眺めのよい窓際のテーブル席。
こんないいところに来るとは思っていなかったから、私は席について飲み物を注文し終えたオーナーに小声で抗議をした。
「……こういう場所に来るなら前もって教えて欲しかったです」
今日はたまたまジーンズを穿いていなかったからよかったものの、それでも周囲で上品に食事をするお客さんたちに比べたら、私はラフすぎる。
「別にその格好で変じゃないよ。それにホテルの最上階で食事なんて言ったら、今日の目的がきみにばれてしまいそうで嫌だったんだ」
「今日の目的……?」
「ま、それは乾杯のあとで」
オーナーは笑顔ではぐらかしたけれど、私はなんとなく気がついてきた。
窓の方を向けば思わず見とれる夜景。
そしてきっと高級なのであろうこのレストラン。
セリちゃんを実家に預けてまで、私と一緒にいたいと言ったのは……
「――食前酒でございます」
はっと我に帰ると、シャンパンがグラスに注がれていた。
立ち上る泡の向こうで、オーナーはすでにグラスを持っている。