アロマな君に恋をして

『部屋をとってある』


食事の後で言われたその台詞はすでに想定の範囲内だったから、私は特にどぎまぎしたりせずに彼の後ろを従順に歩いていた。

そして、そんな自分は健吾さんに少しも惹かれていないのだと今さらのように気がついた。


だって、相手が好きな人なら……

例えば、麦くんとの初めての時は、口から飛び出しそうなほど心臓が暴れてたし、嬉しいのに涙が出るし、自分じゃコントロールできないくらいの大きな感情の動きがあった。


でも、今は――……



「明かりを消そうか。外が十分明るいし、その方が幻想的だ」



部屋に入るなりそう言い、電気を消した健吾さん。

さっきのレストランより少しだけ下がった階のこの部屋からも、夜景が一望できる。

ふわふわと、ブーツのかかとを絨毯に沈み込ませながら窓に近づきガラスに手をつくと、後ろから健吾さんが私を抱き締めた。


――ほら、やっぱり私。


全然ドキドキしてない……


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