アロマな君に恋をして
そのまま耳にキスをされて、彼の唇が首筋をなぞるように滑り降りているときだった。
私はふと、鼻腔をくすぐる香りがいつもの彼の香りと違うことに気がついた。
強引な彼によく似合うスパイシーな香りが、今日はしない。
代わりに、甘くてセクシーな……どちらかと言えば女性的な印象の、花の香りがする。
「――ん!」
香りに気を取られていたら、健吾さんの手がセーターに入り込み、私の胸に触れた。
……声が漏れたのは快感のせいじゃない。
やめて、というのを噛み殺したら、思わず出てしまったのだ。
だって私にやめてという権利なんて……
目を閉じ、唇を噛み、思考もストップさせて私はただ健吾さんの愛撫に耐えた。
やがてふわりと体が浮き、ベッドの上に寝かされた感触がしたから、私がうっすらと目を開くと……
「…………泣くなよ」
ものすごく傷ついた表情の健吾さんがそう言って、私から目をそらした。
うそ……
私、泣いてるの……?
自分の手で目尻に触れてみると、彼の言う通り指に冷たい感触があった。