アロマな君に恋をして

ちっとも食の進まない私を見た緒方さんが、まだ手つかずの私のレバーを一本奪って口に入れ、ぽつりと呟く。


「……なんだか、全然嬉しそうじゃないわね」

「そんなことないです……」


自分で言っていて、しらじらしいと思ってしまった。

いつまで私は自分をごまかし続けるんだろう……


「……オーナーは、なずなちゃんに本気よ?」

「知ってます……だから、頑張ってその気持ちに応えたくて……」


そう言ってビールをあおった私に、緒方さんはため息をついた。


「……思ったより、事態は深刻そうね」


少し酔いの回った私の頭はうまく働かなくて、緒方さんの言っていることがよく理解できなかった。


しばらく無言で食事をしていると、背後で引き戸の開く音がして、空いていた私の隣の席に男の人、そのまた隣に女の人が座った。

体の大きい人だな、と隣の男性を何気なく見ていたら、見覚えのある横顔だと言うことに気が付いた。

と、いうか、こんな髪型をしている人は、今までの人生で一人しか巡り合ったことがない。


「ビール二つ。あとだし巻き玉子とハツとボンボチ」


そのドスの効いた声で、私は確信した。


この人、麦くんの雑貨屋さんの……!


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