アロマな君に恋をして
今まで一度も晴れなかったのに、今日の空と来たら私の心と裏腹に、スッキリとした快晴。
風もなく、一足早く春が来たような陽気だった。
マンションから徒歩で十分ほどのところにある教会は、有名な大聖堂ほどではないけれどまるでお城みたいに凝ったつくりで、色褪せた外壁には歴史を感じさせられる。
ここへ来るまで私はもちろん健吾さんと一緒だったわけだけど、一言も言葉を交わしていない。
というか、朝起きたときに「おはよう」と言ったきり、私たちは目も合わせていなかった。
セリちゃんは後で顔を出すと言って、マンションに残っている。
彼女はあまり私たちの結婚式が見たくないのかと思うようなそっけない態度で、朝食のクロワッサンをかじっていた。
「――じゃあ、後で」
私が朝の回想をしていると、健吾さんがひとつの部屋のまえで立ち止まった。
教会が用意してくれた、新郎用の控え室だ。
「はい。……後で」
なんとか笑顔をつくってそこで彼と別れ、私は少し進んだ先の扉をノックした。
髪とメイクを整えてもらって、きちんとドレスを着れば花嫁としての自覚が芽生えるだろうか……
そうであって欲しいと願いながら、私は控え室に足を踏み入れた。