アロマな君に恋をして

「セリちゃんって、好きな人いる?」


自分の初恋は中学生の頃だったけど、きっと今の子は早いんだろうなぁ。


「……います」


彼女は私の方を見ずに、ぽつりと言った。

元気がなさそうなのは、照れているからなのかな、と能天気なことを思った私は、さらに質問を続ける。


「どんな子?」

「……優しくてかっこよくて……でもちょっとヘタレなの」


“ヘタレ”だなんてワードが出て来たから、私は思わずクスリと笑ってしまった。

でも、そんな欠点のある彼でも好きだなんて、セリちゃんもちゃんと恋愛してるんだなぁなんて感心する私。


「だけど……片想いなの」


セリちゃんが、肩を落として呟いた。


「片想い……?」

「そう。しかも望みはほとんどないの。年の差だってあるし、それに……」


そこで言葉を切ったセリちゃんは、何故か私を大きな瞳で見つめてきた。


「前の彼女と別れてからずっとその人のこと引きずってて、彼女が他の男の人とイギリスに行っちゃってからもまだしつこく想い続けてるんだもん」


イギリス……って。

まさか、セリちゃんの好きな人は……



「……なずなさんはもう、麦くんのこと嫌いになったの?」


「セリちゃん……」



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