アロマな君に恋をして

彼女の口から出たのは、自分に問うのが怖くてずっと蓋をしていた素直な疑問。


私は麦くんを嫌いになったの?


そんなわけ……


嫌いなら、わざわざ離れる必要なんてないし、昨日の夜みたいに涙は出なかっただろう。

好きだから、あの日も疑ってしまった。

好きだから、近くに居るのもつらかった。

今日がこんなに憂鬱なのも、まだ、好きだから……



「……なずなさん?」



セリちゃんの心配そうな声で我に返ると、鏡に映る私は涙を流していた。



「……どうしよう、私……結婚……するのに……」



スタイリストさんが慌ててハンカチを手渡してくれたけど、涙は堰を切ったように溢れてくる。

口にしていいはずのない気持ちも、思わずこぼれてしまう。



「まだ……好き……みたい……っ」



ここに居ない彼を想い、私は涙ながらに告白した。


今日この日が来るまで、どうして目を背けてたんだろう。


別れた直後にそう言って、どうして彼にすがらなかったんだろう。


ずっと消化不良のままにしていたからこそ、こうして向き合った気持ちは、私が思っていた以上に大きく膨らんでいた。


――――今すぐ麦くんに逢いたい。


そんな無理な願い事までもが心に浮かんで、私の胸をきつく締めつけた。



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