アロマな君に恋をして
「ごめんなさい……セリちゃんに、こんな……」
私は、健吾さんの娘を前にしてなんてことを言っているんだろう。
これまで本当の家族のように私を慕ってくれた彼女を裏切るようなこと……
罪悪感に苛まれる私に対し、セリちゃんはあっさりとした様子だった。
ストン、と椅子から降りて、私に笑顔を向ける。
「……私は平気です。でも、これで安心しました。パパのやろうとしていることはただのお節介じゃないってよくわかった。
私、これから忙しくなるのでもう失礼します。……なずなさん、頑張って」
……今彼女はすごく気になることを言っていた気がする。
“パパのやろうとしていること”って、いったい何……?
「セリちゃん、待っ……」
けれど私の呼びかけもむなしく、小さな妖精はあっという間に控室から出て行ってしまった。
そして彼女と入れ替わるように、健吾さんが私を迎えにきた。
「――準備はできたかな?」
扉越しにそう言われて、私は立ち上がった。
準備……正直心の方は全く整っていないけど、それでもちゃんとしなくちゃ。
こんな気持ちで健吾さんの隣に立ったって……
私は……
神様の前で永遠の愛なんて、誓えない。