アロマな君に恋をして
「私……」
ズルい女でごめんなさい。
助けてもらったのに恩をあだで返すようなことしかできなくてごめんなさい。
セリちゃんの母親になれなくてごめんなさい。
あなたを愛せなくて……ごめんなさい。
胸の内にはたくさんの謝罪の言葉が渦巻いていた。
だけどきっと、そんな言葉を連ねたところでいいわけにしか聞こえないから……
「あなたとは結婚できません……ごめんなさい!」
私は健吾さんに向かって、深々と頭を下げた。
殴られたって蹴られたっておかしくないことを私はしてきたと思う。
いつまでもはっきりしないで、結婚の期待までさせて。
だけど健吾さんはそんな行動には出ず、「頭を上げて」と私に言った。
ゆっくりと上体を起こしておそるおそる彼の顔を見れば、そこにあったのは穏やかな笑顔で。
「……もう、随分前からわかってたよ。こっちこそ苦しませて悪かった。……完全に、僕の負けだ」
最後の台詞は、祭壇の彼の方を見ながら言った健吾さん。
「健吾さん……」
そんな優しい言葉をかけられるとは思っても見なかった。
最後に私たちの方を一度ずつ見て、彼は言う。
「それじゃ……あとはお好きにどうぞ」
大股で堂々とバージンロードを逆に歩いて行く健吾さんの背中に、私は何度も何度も心の内で伝えた。
ごめんなさい……
そして、ありがとう。