アロマな君に恋をして
「あ、ありがとうございます!」
うわぁ……嬉しそうに笑っちゃってるし。
だけど……いくら考えても解らない。彼がどうしてそんなに私に構うのか……
「またいつでもいらっしゃい」
「はいっ!」
すっかり彼を気に入ってしまった緒方さんは、店の外まで出て彼を見送っていた。
「レモンバジルチキンですって~。あとで私にも一口頂戴ね?」
戻ってきた緒方さんがそう言いながら手提げを私に渡そうとするけど、私はそれを受け取らずに言う。
「一口って言うか……全部食べちゃってください」
「そんなことできるわけないじゃない。あの子きっとなずなちゃんのことを思いながら作ったのよ?」
「……でも、変なの入ってるかも」
「そこまで疑うなら私がまず毒味するから、問題がなければ全部食べてあげなさいよ」
……コンビニのおにぎりとパンで充分なのにな。
そう思いながらもこれ以上緒方さんに逆らうのが怖くて、私は仕方なく頷いた。
アロマオイルのプレゼントも理解不能だったけど、手作り弁当をわざわざ持ってくるあの子は一体何がしたいんだろう。
名前は確か、大久保麦、とか言ってた。むぎくん、か。……ってなにくんづけしてるのよ。
年齢は不詳だけど、たぶん年下。職業は、雑貨屋店員。
決して気になっているわけではない。
が、迷惑な男として記憶に焼き付けておくために、私は彼のプロフィールを整理して頭の中のファイルに綴じたのだった。