アロマな君に恋をして
「ずっと……こうしたかった、なずなさん」
麦くんが短い階段を下りてきて、私を強く抱き寄せた。
私は自分も彼を抱き締めたくて、持っていたブーケを床に放り、その背中にぎゅっとつかまる。
麦くんの温もり……彼のにおい……すべてが懐かしくて、何より愛おしい。
――このまま永遠に離れたくない。
そう思ってまだまだ抱き合っていたかった私だけど、麦くんはそっと身体を離して私の泣き顔を見つめる。
「なずなさん……もう、やめよう?」
「え……?」
やめる……?
今抱き締めあったばかりなのに、もう私を突き放すの?
そんな風に思って、頼りない顔をする私。
だって、私は嫌……あなたを手放すなんて、もう……
ぎゅっと彼の服をつかんで“いや”という意思を伝えると、麦くんは優しく微笑んでこう言った。
「俺はもうやめたい。諦めるのも、意地張るのも……別々に生きるのも」
――別々に生きるのも。
それは、もしかして……
目を見開く私に、麦くんはゆっくり頷き、そして私の手を取り神父さんの前へ連れて行った。