アロマな君に恋をして

「――お願いします」


麦くんがそう言うと、綺麗な白髪の神父さんは祭壇の下から何かを取り出した。


白くてふわふわとした台座に、二匹の白いクマ……

その片方の腕に、シルバーのリングが。


「時間がなくて、なずなさんの分しか作れませんでした。でも、本番はもっとたくさんの人に祝福して欲しいし、今日はとりあえずエンゲージリングということで許してくださいね」

「作ったって……この指輪、麦くんが?」


指輪って手作りできるの?

驚いて聞き返すと、彼は照れたように頬をかく。


「指輪と、それからこのリングピローも。ほら、見てください」


麦くんが指差したのは、クマの胸元。

彼らの着ているちっちゃなタキシードとウエディングドレスに縫い付けられているのは、アルファベットの刺繍されたワッペンだった。


男の子の方には“М”、そして女の子の方には“N”……これって。


「麦となずな……?」

「よかった、わかってもらえて。最初これは別のカップルのために作っているつもりだったんですけど、依頼主が徳永さんだって気が付いてからは、普通のを作るのなんだか悔しくなって……」

「健吾さんが依頼……?」

「――ま、その話はあとでゆっくり」


話を曖昧なままはぐらかした麦くん。

神父さんの方に向き直った彼は、クマの腕から指輪を取ると、私の左手の白いグローブを外し、薬指にそっと通した。



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