アロマな君に恋をして
この神父さん……日本語、ペラペラ。
でも、それより“皆さん”って誰……?
「行きましょう、なずなさん」
「う、うん」
麦くんに手を引かれて、私たちは扉に向かってゆっくりと歩き出す。
行くって、どこへだろう?
それにこの後、私たちはどうするんだろう?
健吾さんが去ってしまう前に、もう少しちゃんと話を聞いておくんだった……
私はまだ、こっちで学ぶことがたくさんある。
だけど麦くんは仕事があるし、日本に帰っちゃうよね……
これ以上ないほどの幸せに包まれていたはずなのに、欲張りな私はそんなことを考えて落ち込んでいた。
けれど麦くんは扉の前まで辿り着くと、そんな私には一切気づいていないかのようにあっさりと聖堂を出ようとしている。
ここを出たらなんだか魔法が解けてしまうような気がする……
今までのが、全部自分に都合のいいただの妄想だったらどうしよう……
不安な気持ちのままでコツ、と聖堂の一歩外へ足を踏み出した時だった。
「――なずなちゃん、おめでとう!」
ここに居るはずのない懐かしい人の声がして、同時に目の前で色とりどりの花びらが舞った。
はらはらと落ちて行く赤やピンクや黄色を見ながら呆然とし、その向こうで微笑む人物が誰なのか理解したとき、私の瞳はまたも潤んできてしまった。