アロマな君に恋をして

「うまくいったみたいですね」


そう言って無邪気に笑った彼女は、すべて知っているようだった。


「うん……ありがとう。セリちゃんと、それからあなたのパパのおかげ……そういえば、そのパパは?」

「パパは今一人で拗ねてます。だから私が伝言を伝えに来ました」


伝言……?

首を傾げる私に、セリちゃんがポケットから一枚のメモ紙を取り出して渡す。


私がそれを読んでいる間に、セリちゃんは麦くんの方へ駆けて行った。



「健吾さん……」



そこに書かれていたのは、私にとっていいことだらけの内容だった。

彼を一人の男性として好きになることはできなかったけれど、人としては尊敬できる面をたくさん持った魅力的な人だと改めて私は思った。


いつか、彼にも素敵な相手が現れますように……

余計なお世話かもしれないけれど、そう願わずにはいわれない。


「なずなちゃん!ちょっと!」


私がメモを握りしめてしんみりしていると、緒方さんが急に私の肩を叩く。

「なんですか……?」と振り向くと、セリちゃんが麦くんのほっぺたにキスをしているのをバッチリ見てしまった。



「幸せにならなかったら、許さないからね!」



麦くんの顔にびしっと人差し指を突き立ててそう言い放ったセリちゃんは、くるりと踵を返すと来た道を急いで駆け戻って行った。

その顔は、少しだけ泣いているようにも見えた。


セリちゃんの、初恋だもんね……

私たち、きっと幸せになるから……

どうか、どうか許してね……



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