アロマな君に恋をして
17.アロマな君に恋をして
その日のお昼は緒方さんと店長さんとカリブ海風料理を四人で食べ、夕方の便ですぐに帰るという二人とはそこで別れた。
私は今まで健吾さんたちと住んでいたマンションに帰るわけにはいかないので、麦くんの滞在しているホテルにお邪魔することになった。
そこは小さいけれど清潔感があって、バルコニーからはロンドンの街並みが見渡せる七階の部屋。
結婚式も素敵だったけれど、こうして二人きりになれたのも久しぶりだし嬉しい。
離れていた間のことを話すのに、一晩で足りるかな……と、窓際の椅子に腰かけながらひとりにやついていた時だった。
「なーずーなーさん」
今までベッドの上で、ガイドブックを眺めていた麦くんが、私を呼んだ。
「なあに?」
「なあに、じゃないです。どうしてこっちに来てくれないんですか」
不服そうに口を尖らせる麦くん。
私は一瞬ドキッとして、ばれたか……と心の中で舌を出した。
せっかくだから、たくさん触れ合いたい気持ちもあるけど……久しぶりすぎて、彼との距離の取り方がわからなくなっているのだ。
そう言われてすぐに抱きつける性格でもないし、結局私って可愛くない。
素直に甘えることができずに黙っていると、その空気を変えるように部屋のドアベルが鳴り響いた。
天の助け!とばかりに応対しに行くと、健吾さんから私の私物の数々が届いたのでホテルの従業員が持ってきてくれたところだった。