アロマな君に恋をして
ううん……
いつもいつも途中で私が泣き出すから、健吾さんにすべてを見せたことはなかったんじゃないかな……?
「見られてない……と思う」
「なにそれ、なんで曖昧なの」
……今日の麦くん、しつこい。
こんなやりとりがしたいわけじゃないのに。もっともっと仲良くしたいのに。
と、素直に言えればいいのに、私はまたしても可愛げのないことを口走ってしまう。
「麦くんこそどうなの? 歩未さん」
「だからアユとは何も……あ、キスされた、けど」
「やっぱりしてたんじゃない! 嘘つき!」
ああこれじゃ、あの夜と同じだ……どうしてこうなんだろう。
好きなのに、嫌われたくないのに、逆のことばかり、口が勝手に……
――そうだ、こんな時には……
「……ちょっと、離れてもらっていい?」
そう言うと、少し傷ついた顔をしながらも、麦くんは私の手首を解放してくれた。
私はさっき届いたスーツケースを開いて、一本のアロマオイルを取り出す。
これは先生にブレンドしてもらったスペシャルオイル。
イライラや怒りを抑えるのに効果的で、今の私にはぴったりだ。