アロマな君に恋をして

お昼の休憩は、いつも緒方さんと交代で入る。

日によってどちらが先かはまちまちだけれど、今日はもちろん緒方さんが先だ。

……あのお弁当を、毒味するために。


お店の方は暇だったし、もし本当に毒でも入ってたら緒方さんが心配……そう思った私は、少し早めにスタッフルームの扉を開けてみた。


目に入った緒方さんが食べているのは、どうやら自分で作ってきたお弁当のようだった。

テーブルの上のチェック柄のお弁当箱には見覚えがある。

もう、毒味は終わったのかな……?


「あれ?なずなちゃん、お店の方で何かあった?」

「あ、いえ。お客さんもいないし、緒方さんが倒れてないか心配で……」

「あはは、大丈夫よ。あのお弁当は食べてないもの」

「食べてない……?」


首を傾げると、緒方さんが彼の手提げから赤いバンダナに包まれたお弁当箱を取り出した。

そのサイズは男物なのか大きくて、お母さんがお父さんのために作ったお弁当みたいだった。


「この手紙読んだら、食べられなくなっちゃって」


手紙……?

緒方さんがバンダナの結び目に挟まった、小さなメモを私に差し出す。

小学生の頃必死で集めたような可愛い柄のメモ帳には、女の子みたいな丸文字でこう書いてあった。


『なずなさんへ
お仕事お疲れ様です。いつも頑張ってるなずなさんにほっと一息ついてもらえるようなお弁当を俺なりに作りました。
なずなさんの疲れが少しでも取れますように。あ、弁当箱は返さなくていいです』


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