アロマな君に恋をして
「ど、どうしたんですか! なずなさんがそんなことするなんて……!」
真っ赤になって慌てる麦くんのおでこを、私は人差し指でつついてこう言った。
「もっと自信を持ってよ。私が好きなのは麦くんなの! だから日本に帰るの!」
「……すいません。ああなんかそういうなずなさんもいいなぁ。もっと怒って下さい」
「い、いやよそんなの……」
そう言われると恥ずかしくなるじゃない……
急に勢いを失くした私を、麦くんがふわりと抱き締める。
「……嘘です。もちろん、どんななずなさんでも好きですけど、やっぱりそうやってすぐ照れちゃうなずなさんが可愛くて大好きです」
「もう……」
私はそれだけ言って、不貞腐れたように麦くんの胸に顔をくっつける。
でも本当は、心の中でだけ、彼に愛の告白をしていた。
……私もどんな麦くんでも好き。だけどあえて言うなら、やっぱり、そうだなぁ。
優しくて、笑顔が可愛くて、でもスイッチが入るとカッコよくて、手先が器用で料理も小物も簡単に作ってしまって……それとね。
「麦くん、いいにおいする」
「え、汗臭いですか? シャワー浴びて来た方がいいかな」
「ううん、いいの。癒し系だから」
「癒し系……?」
不思議そうに言って自分の腕をクンクンする彼がおかしかった。
きっとそれは私だけにしかわからない特別な“アロマ”。
日々の疲れも、荒んだ心も癒してくれる、魔法の香り。
麦くん、大好きよ。
これからもずっとずっと、私を癒してね――。
アロマな君に恋をして
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