アロマな君に恋をして
「……これでもまだ、毒が入ってると思う?」
ペットボトルのお茶を飲み干した緒方さんが、私に訊く。
私は胸の奥のどこかが小さくつねられたような痛みを覚えて、その手紙から目を離せない。
「ゆっくり食べてあげなさい?私、お店に戻ってるから」
ぽん、と私の肩に手を置いてから、緒方さんはスタッフルームを出て行った。
扉が閉まると同時に、私はお弁当箱に目を向けた。
そういえばアロマオイルを貰った時にも言われた。
“いつも疲れた顔してる”――って。
変なことを言う子だと思って相手にしなかったけれど、もし本当に彼の目に私がそんな風に映っていて、だからアロマオイルをくれたり、お弁当を作ってきてくれたんだとしたら……
私は手紙をテーブルに置いて、お弁当のバンダナを開く。
出てきたのはやっぱり男ものの大きなお弁当箱で、私はその蓋をそっと開いた。
「くま……?」
いわゆるキャラ弁ってやつだと思う。
おかかしょうゆか何かで茶色くしてあるごはんがクマの形になっていて、海苔で目と鼻を付けてある。そのクマの頭には……カニカマでできた赤い三角帽子。
これ……あのスノードームの?
昨日、私が手に取って見ていたから……?
……まただ。また、胸の奥が変。
心のどこかの……最近使っていなかった柔らかな部分が、むずむずして落ち着かない。