アロマな君に恋をして

私は椅子に腰かけ、手提げの中に入っていたお箸を持つとお弁当と向き合った。

クマの周りには、飾り切りしたゆで卵やきんぴら、そして彼が自画自賛してたレモンバジルチキンがあった。

ちゃんと一口大に切られたそれを箸で持ち、鼻に近づけてみる。


「いい香り……」


レモンもバジルも、その香りは思考をクリアにしてくれる効果がある。

さっきから心をつつくものの正体がなんなのか、この料理が教えてくれるかしら……？


ぱくりと半分ほどかぶりついてみる。スパイシーで爽やかで、とっても美味しい。

これ、しっかり味が付いているから何時間か漬け込んだりしたんじゃないかしら……だとしたら、ものすごい手間だ。

そんな手間のかかるものを、わざわざ作って持ってきて……

彼の目的は一体なんなんだろう。


「……とりあえず、食べよ」


結局レモンもバジルも何も教えてはくれないけれど、料理が美味しいことだけは確か。


いつもパンかおにぎりしか食べない私なのに、男物の大きなお弁当箱はみるみるうちに空になり、制服のエプロンに隠れた私のお腹は幸せな満腹感とともにちょっぴり膨らんだ。