アロマな君に恋をして
翌朝、緒方さんに何か勘繰られたら困るので、私はいつも持っている大きめの鞄の底に手提げを隠して出勤した。
いつも通りアロマを焚いて、接客をして、休憩のときにはコンビニのおにぎりの他に、野菜スープを買って食べた。
インスタントだからフリーズドライの野菜しか入ってなかったけれど、おにぎりしか食べない日よりは元気に午後を過ごせたような気がする。
そして閉店時間になり、一緒に店を出た緒方さんに私はつとめて普通の顔をしながら言った。
「ちょっと寄るところがあるので、今日はこれで失礼します」
「あら、珍しい。買い物かなにか?」
買い物……確かにあそこはお店だし、何か買う可能性もあるから別に肯定しても嘘にはならない、よね?
「……そんな感じです」
「ふうん。その間(ま)が気になるけど、今は何も聞かないでおいてあげる」
「え?」
「彼によろしくね。それじゃ、また明日」
ひらひらと手を振りながら、帰って言った緒方さん。
聞かないでおいてあげるって言いながら、私がどこに行こうとしているのか解っているみたいだ。
……明日が怖いけど、ま、いいか。
「……さ、行くか!」
ふうっと息を吐き出して気合を入れ、最近めっきり寒くなったからとぐるぐる巻きにしたマフラーに顔を埋め、私は雑貨屋の方向へと歩き出した。