アロマな君に恋をして
「返さなくていいって手紙には書きましたけど、だったら使い捨ての容器にすればいいと思いませんでしたか?」
「え……あ……言われてみれば」
「もしかしたらこうして返しに来てくれるかなって、期待してたんです。なずなさんと話すチャンス作れるかもって」
「え……」
それじゃ、私はもしかして……
まんまと彼の策略にはまってしまったという訳……?
く、悔しい。
やっぱりからかわれてたんだ。
見るからに女子力の低い年上の女が思い通りに動くかどうか。
「……あれ、なんか小さい紙が入ってる」
手提げの中を覗いた彼が呟き、それを取り出そうとしている。
わ、この状況であのメモを見られるのはかなり恥ずかしいものが……!
「じゃ、じゃあ私はこれで!確かに返しましたからね!」
逃げるようにその場を去ろうとしたけど、それは叶わなかった。
私の手首をしっかり握ったのはあったかくて大きな手。
おずおずと振り向けば、もう片方の手にメモを持って、鼻に近づけている麦くんが居た。