アロマな君に恋をして
――まずい。バンダナに付けておいた香りが、メモの方にも移っていたんだ。
メモの存在も、もらった精油で香りづけしたことも、できれば彼がひとりになった時に気付いてほしかったのに……
「なずなさん」
「は、はい……」
何を言われるのかが怖くて、息を飲んで身構えたときだった。
「今日こそ、俺に持ち帰られてくれませんか?」
大真面目な顔で、麦くんはいきなりそんな爆弾を私に落とした。
も、持ちかえ……っ
激しい爆風にさらわれた私の思考は、ぱらぱらと白い塵が舞うだけですべての機能がストップしてしまう。
「お前なぁ……激しく勘違いされるようなこと言うなよ。固まってんぞ、このねーちゃん」
今まで少し離れた場所で私たちを静観していた店長さんが、そう言ってこちらに近づいてきた。
「……俺、なんか変なこと言いました?」
「あぁ。お前は今このねーちゃんを襲う気満々ですって言ったようなもんだ」
「え、あ!違うんです!なずなさん、えーと」
……なんなの、この子は。天然?それとも確信犯?
必死で修復中の頭の中はつぎはぎだらけで、次に何か問いかけられたら正しく答えられる自信がない。
「――何もしませんから、俺の家に来ませんか?」
でもよかった。これなら簡単な質問よ、なずな。この間も聞かれたもの。
答えはそう……
「……はい」
壊れかけの頭じゃなく、心を経由して返事をしようとしたら……
私の口は勝手に動き、そう発音していた。
麦くんの唇が、とっても嬉しそうに大きな弧を描いた。