アロマな君に恋をして
5.ペパーミントな告白
『コイツが約束を破って手を出してきたら、俺に言ってくれ。そん時は俺が制裁を与える』
最後にそんな頼もしいことを言ってくれた店長さんと別れて、私は麦くんと並んで歩き出した。
背の高い彼の方が明らかに歩幅が大きいはずなのに、私に合わせてゆっくり歩いてくれる。
「寒いですね」
「……そうね」
「店長、面白い人でしょ」
「……そうね」
別に私は嫌がらせでこんな返事をしているわけではない。
他になんと言ったらいいのか全くわからないから、ついつい投げやりな言い方をしてしまうのだ。
けれど麦くんは気分を害した風でもなく、気さくな調子で私に話しかけることを止めなかった。
「なずなさん、今日、泊まっていきます?」
「……そうね。って、え!?」
「新品の歯ブラシも、女の子用の下着もパジャマもありますから、帰るのが面倒だったら是非……」
「お、お断りします!!」
店長さん、この子制裁決定です!!
何もしないって言っておきながら、その約束をこんなにあっさり破ろうとするってどういうことよ……!?