アロマな君に恋をして
「あ、もしかしてまた誤解を招くような言い方してましたかね俺……
なずなさんが泊まっても、寝込みを襲ったりしないから大丈夫ですよ?」
「……信用できません」
私がぴしゃりと言うと、麦くんは口をつぐみ、それきり黙ってしまった。
……ちょっと冷たく言い過ぎたかな?
ちらりと高いところにある横顔を盗み見ると、ちょうど彼も私を見たところでバッチリ目が合ってしまった。
麦くんはふわりと微笑み、それを見た私は頬に熱が集中するのを感じて、ぐりんと首を正面に戻した。
やめてよ、そんな顔で笑うの……
男慣れしてないアラサーの心臓には刺激が強すぎる。
「あ、このマンションです」
私の反応なんてお構い無しに彼が指差したのは、お洒落な三階建ての建物。
これはいわゆる、デザイナーズマンションってやつだろうか。
ヨーロッパの旧市街を思わせる石を使った外壁が自分好みで、内心ちょっと舞い上がってしまった。
私も、社会人になってたくさんお金を貯めたらこういう可愛い家に住みたい、なんて若い頃は思ってたな……
今はお金はあるけど、そんなことすっかり忘れてた。