アロマな君に恋をして
散らかってる、なんて麦くんは言ってたけれど、私の部屋よりよっぽど綺麗だし、家具もそれに飾られた小さな雑貨たちも全部が可愛らしくて、まるで女の子の部屋みたいだった。
「今ご飯の準備しますから、待っててくださいね」
そう言って彼が向かったキッチンは対面式で、私のいる場所からちょうどよく見える。
「なにを作ってくれるの?」
「なずなさんに足りない栄養素が摂れるもの」
「私に足りない栄養素……?」
カルシウム……は確実に足りてない。
いつも飲みきれなくて捨てちゃうのがもったいないから、牛乳を買うのは数年前から辞めてるし。
ビタミンもなぁ……時々吹き出物が出ちゃうからきっと……
そもそも最近食事自体が適当だから、何もかもが足りてない気もするし――――
答えのわからぬまま、キッチンを動き回る麦くんをぼおっと見ていた私。
漂い始めたお料理の香りとともに、どんどん空腹感が増していくのがわかった。