アロマな君に恋をして

「でも……しばらく新生活で忙しくて、久しぶりに店に行って驚きました。
なずなさんが、別人みたいになってたから……
何かに追い立てられるように仕事して、笑顔もぎこちなくて、好きで仕事しているっていうより、仕事にしがみついてるって感じで……」


照れた顔を隠すためにお茶に口をつけていたら、急にそんなことを言われて私はむせてしまった。

……思い当たる節があるからだ。

ごく最近、緒方さんと話していてそのことを思い出したばかりだったから……


私は小さく息を吐いてから、明るく笑って彼を見た。


「……ああ、それね。たぶん前の彼氏……っていうか婚約者に振られちゃって、ちょっと病んでた時期があったのよ。
でも、だいぶ昔の話でしょ?今はもう、彼の顔も忘れちゃってるくらいだから全然気にしてないのよ?」

「……嘘です」

「何でそう思うの……?」

「うまく言えないけど……なずなさんはそのことを乗り越えたんじゃなくて、隠すのが上手くなっただけだと思うんです。
気が緩んだ時に、そのツケがまわってきて……だからなずなさんはいつも疲れてる」


……心にダイレクトに刺さる言葉だった。

“隠すのが上手くなっただけ”……確かに、そうなのかもしれない。

泣いて泣いて、それでも癒えなかった傷はいつしか絆創膏を貼るみたいに何かで覆って見えなくしてしまった。

その内側で本当は、傷が化膿しているかもしれないのに……


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