アロマな君に恋をして
「本当はもっと早くに声を掛けたかったんですけど、俺自身にも心配事があったからなかなかそうできなくて……」
「心配事……って?」
「俺、両親を小さなころになくしてるからここに引っ越すまでばあちゃん……祖母と二人暮らしだったんです。
俺はずっと一緒に暮らすつもりでしたけど、祖母は老人ホームに入ることをずっと考えていたみたいなんです。
俺が就職して自分一人で立てるようになったら言い出そうと思ってたって……
あんたはいい男なのに、私が居たんじゃいつになっても嫁が来ないだろうって。そんなことないって言いましたけど祖母は一度言い出したら聞かない人で。
だからひと月前に前の家を売って、祖母は老人ホームに。俺はここで一人暮らしを始めたんです。
ばあちゃんが施設に慣れるまでが心配でしたけど、こないだ顔を見に行ったら友達もたくさんできてて、俺と暮らしてた時より楽しそうでした。
それを見てたら、俺もこれからは自分のことを一番に考えようって、そう思ったんです」
話し終えた麦くんの目が、真っ直ぐに私を射抜いた。
おばあちゃん想いの優しい彼。
そのおばあちゃんと離れて暮らすようになった彼が、これからその優しさを向けようとしている相手は、もしかして……
「なずなさん」
「……はい」
「俺、なずなさんが好きです」