アロマな君に恋をして
「結婚するにあたって、仕事を辞めて欲しいと思ってる」
ある日私の家で会っている最中、彼が疲れた表情でそんなことを言って来た。
私は意味が解らなくて、笑顔を貼りつけたまま「どうして?」と聞いた。
「どうせいつかは専業主婦に落ち着こうと思ってるだろ?だったら今辞めてもいいじゃないか。アロマの仕事なんて少し勉強すれば誰だってできる」
彼がそんな考えの持ち主だったなんて、結婚の話が具体的になるまで全くわからなかった。
私が見抜けなかったと言えばそれまでだけど、でも、大好きだったから……好きだからわかって欲しくて、私も私で言い返したんだ。
「私は、結婚しても子供が産まれても、今の仕事を続けたいと思ってるよ?
好きで始めた仕事だし、接客も上手くできるようになってきて、最近やっと先輩にも認められるようになったんだよ……?」
「でも、勤務時間の割に給料は安いし、店員の数が少ないから休みたくても休めないじゃないか。
結婚したら、なずなには俺のサポートをして欲しいんだよ。俺が疲れて帰ってきたときに、部屋がきれいで、美味い飯があって、風呂が沸いてる。それが俺の望む結婚生活なんだ」
そんな話は初耳だった。確かに私のお給料は、一般的な企業に比べて安いのかもしれない。
だけど、二人で働いてるのだから充分だし、私だって家事以外のこともしたい。