アロマな君に恋をして
もともと価値観が違ったのだから、これは仕方のない別れ……
そう割り切ろうとしても、楽しい思い出だってたくさんあったから、私は立ち直るまでかなり時間がかかった。
それでも私を待っていてくれた緒方さんに支えられて、こうしてまた元気に働けるようになったんだ。
彼女は私に恋愛させたいみたいだけれど、私にもうそんなエネルギーは残っていない……
麦くんはいい子だと思う。
告白に嘘もないと思う。
だけど私には、それに応えてあげられる心の余裕がない。
「――なずなさん」
その麦くんの声が、私を現実に引き戻した。穏やかな、優しい声だった。
「俺は別に、今すぐどうにかなりたいとかじゃないんです。でも、なずなさんのこと黙って見ていることもできない。
だから、友達みたいなポジションでいいから、なずなさんの支えになりたいんです」
「そんな……私、そんなことしてもらうほど価値のある女じゃないよ。
麦くんは、いくつ?私よりはずいぶん若いでしょう?あなたにはこれからもっともっと素敵な出会いが待ってると思う。こんな面倒臭いアラサー女に構ってる場合じゃない、時間の無駄よ」