アロマな君に恋をして

カッコよくて、優しくて、料理もできて、家族想いで……

そんなあなたに好きになってもらえたこと、私はそれだけで充分。

口には出さなかったけれど、私はそう付け加えた。

どこか吹っ切れた気持ちで彼を見つめると、彼の方は少し怒ったような表情で私を見ていた。


「そういうところがあるから、心配なんです。24の俺は、なずなさんにとっては子供にしか見えないのかもしれないけど、今日こうしてなずなさんと過ごせたこと、すごく嬉しかった。時間の無駄なんてこと、絶対にない。
ねえ、なずなさん……」


その純粋すぎる黒い瞳に見つめられると、何もかもを見透かされてしまいそうで逃げたくなる。
だけどそんな思いに反して、身体は金縛りにあったように動かない。



「――もっと、自分を大切にしてください」



ああ……この子は本当に。
どうしてこんなに目に見えないことに敏感なんだろう。


「無理して、強がらないで」


――強がってなんかない、と言うことができなかった。


本当は私……

泣くのを止めてからもずっとずっと、つらかったんだ。

自分でさえ気が付かなかったそのことを、彼がどうして知っているんだろう。

どうして私は、救われたような気持になってるんだろう……


「…………っ」


麦くんの優しさと、私に対する真摯な愛情が痛いほど胸に沁みて、私の目から涙が溢れた。


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