アロマな君に恋をして

そんな私にも麦くんはやっぱり変わらない優しさを向けてくれて。


「今日はどんなものが食べたい気分ですか?」


無邪気な笑顔でそう訊いてくる。


「うーん……寒いから、体の温まるもの?」

「じゃあおでんにしましょうか」

「……これから作って、ちゃんと味染みるの?」

「うち、圧力鍋あるんでバッチリです」

「ふうん……」


本当に何でも作れるんだな……


「料理は、独学?」

「いえ、ばあちゃん仕込みです。いつも一緒に台所に立って色々教わってました」

「おばあちゃんも、お料理上手なんだ」

「はい、ばあちゃんの料理は絶品です」


私は……お祖母ちゃんどころか母と一緒に台所に立った記憶もあまりない。

手伝って、と言われても自分のことに夢中だからと無視して、いつしか母も私に頼むことをしなくなった。

素直にお祖母ちゃんを褒める麦くんを見ているとなんだかそんな自分が恥ずかしくなる。

お母さん、寂しかったかな……


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