アロマな君に恋をして
他愛のない話をしながら歩いていると、あの可愛い石の外壁が見えてきた。
この間来たときより幾分落ち着いた気持ちで麦くんの後をついて歩いて行くと、部屋の手前で彼が急に立ち止まったので私はその背中に鼻から追突してしまった。
「――アユ」
私がつぶれた鼻をさすっていると、麦くんがそう呟いた。
鮎……?
背中の向こうを覗くと、一人の派手目な女の子の姿が。
真っ赤に塗られた唇が印象的な彼女は、麦くんの姿を見つけるなりこちらに駆け寄ってきた。
「麦〜!今晩泊めて」
そうしてがしっと、麦くんの華奢な体に抱きついてしまう。
え?え?
二人はそういう関係なの……?
だったら私、帰った方がいいんじゃ――……
「アユ、ごめん。今日は無理なんだ。お客さんいるから……」
「お客さん?」
彼女の視線が、若干逃げ腰の私に注がれた。
おそらく麦くんと同じくらいの年齢であろう彼女の若さと、ぱっと見ただけで感じた女子力の高さに敗北感を覚えた私は、居心地が悪くなってうつむく。