アロマな君に恋をして
「なずなさん、アユは専門学校時代の友達です。今は雑貨バイヤー……だっけ?」
「だっけ?ってひどい!学生時代の苦楽を共にした仲じゃん!あ、私白石歩未です。もしかして麦の彼女さんですか?」
「ち、違います!」
あ……どうしよ。思わず否定してしまったけど、もしかして麦くん傷ついた……かな。
おそるおそる彼の顔を見上げると、特に表情が翳った様子はない。
よかった……
「アユ、余計なこと言うなよ。今はまだ俺の片想いなの」
え……それ、今ここで言うことなの……!?
麦くんの方がよっぽど余計なことを言っているような気がするんだけど。
内心焦る私に対し、歩未さんはなんだか嬉しそうな顔で麦くんに訊く。
「もしかしてなずなさんって、あのアロマショップの……?」
「うん。やっとこうして家に誘えるようになったんだ。だからホント、今日はゴメン」
「やっぱり!!そういうことならもちろん!邪魔しちゃ悪いし!また今度詳しく話聞かせてね」
じゃあね、と手を振りながら去って行った歩未さん。
私は彼女の赤い唇の残像を見ながら、なんだか心に黒い雲がかかるのを感じた。
どうして歩未さんが私のことを知っているのかというのも気になるけれど、それよりも麦くんの“今日はゴメン”という言い方が引っ掛かった。
私が一緒でなければ、彼女を泊めてあげたかった、みたいな風に聞こえたんだけど……
それに……たとえ仲の良い友達でも、異性に抱きついたりするもの……?